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亡き妻へのレクイエム「妻の死とともに自分も死んだ」

グリーフケアカウンセラーの日高りえです。

奥様を亡くされたAKIRAさんが、「亡き妻へのレクイエム」と題して、本を出版されました。

闘病中のこと、奥様のこと、ご自身の思いをつづられています。

残念ながら一般発売はされないのですが、最後に書かれていた言葉がとても心を打つ文章ですので、ご承諾をいただいて掲載させていただきました。

エールフォワードとして受け渡していきたいとと思います。

エールフォワードとは、
喪失体験のある方が少し過去を振り返り、愛する方を亡くした時、助けになったこと・励みになったこと・心の支えになった体験を、エールを込めて受け渡していくという意味で名付けています。

妻が亡くなってから自分の心にぽっかりと穴が開いた。何もする意欲が起きない。何の物音をしない家の中で1人座り込んでいると激しい寂寥感に襲われた。昔がやたらに懐かしい。子供たちが時折訪問してくれることと、弟が初めのころ力をつけてくれたことを除けば周囲の誰も声をかけてくれない。

妻の生前は妻の親友や職場の仲間、はては大学時代の仲間までがひっきりなしに我が家に訪れ、談笑をしていた。それだけ妻は多くの人に愛されていた。家の華は妻が作っていてくれたことをしみじみと感じる。今は古池の前にたたずむ芭蕉の様だ。しんとして何の物音もしない。我が家の華やかさは妻の死とともに風のようにどこかへ消え去ってしまった。人気のほとんど感じられない静まり返った一軒家。

妻の昇天とともに自分も死んだのだ。人は死ぬことで無の世界に戻るという。私は伴侶の死によって自分の精神世界もまた無の世界に帰したと感じた。だが私はまだ生きている。息をしていれば、心臓も打っている。この世界に神がいるのであれば、お釈迦様がいるのであればまだ生かされているというのが正しいだろう。しかし生きているという認識や幸せは日々の目標があってこそ感じられる。2人の時代があってこそ、団らんというときがあってこそ生きているという存在価値があることは身をもって感じた。

そんなしおれきった私にこれではいけないと言う妻の天の声が聞こえる。古い自分はいったん死んだのだ。でも心は死んでも私は生物として生き続けている。生きるってことは何だ? 妻のいない世界を生きるということは? 私はここに至って意に反して妻のいる人生と妻のいない人生の2つの人生を生きなければいけなくなった。

いつか死に神が私を手招きするとき、いい人生だったと言って旅立つためには今の残りの人生を自分らしくせいいっぱい生きなければならないのだ。妻のいた過去は泣いても笑っても取り戻せない。これからの自分は生まれ変わらなければいけない。たとえ私の残りの時間が短くても、その限られた時間にも生きた証を遺さなければいけない。そう思って精いっぱい今を生きている。

私は今桜巡礼の旅に出ている。妻は桜が好きだった。まるで自分のはかない一生を知っていたからなのだろうか。生前は日本中の桜を愛でて旅行した。使われなくなってほこりをかぶった妻のデジタルカメラには膨大な量の撮りためた全国各地の桜の花の画像が残されている。その画像を一瞥すれば過去に夫婦で行脚した桜の名所が走馬灯のように浮かんでは消える。

妻の思いを遺すように分骨して遺骨を埋めた京都の墓は大きなしだれ桜の下にある。まだ妻が1度も訪れたこともない桜の大木がそこにある。毎年枝一面に花をつけ、時が過ぎれば、その下で静かに眠っている妻の墓標の上に花吹雪となって散りそそぐ桜がこれだ。妻よ、生前一緒に愛でることのできなかったこの桜、毎年春の季節には愛でてくれているだろうか。私は今日今こそに来ている。彼岸の向こうに行ってしまった妻の墓標の上にははらはらと散り落ちる桜の花びらを見、風にそよぐ桜の枝を見上げている。一緒に眺める人がいなくなって寂しくなった。

妻よ、私も余命いくばくもないだろう。古稀も過ぎた。近いうちにまた会える。いつか一緒にこの桜の下の墓の中で花見をしよう。

この言葉もとても印象的です。

死が2人を分かつまで愛し合うと言う結婚式の牧師さんの言葉を私は今も忘れていない。しかし今はこの言葉をすごく嫌に思う。たとえ肉体が滅んでもずっとずっとつながっていたい。結婚指輪で2人がつながれた時、2人の愛は永遠に紡がれた。私はそう思いたい。

 

「妻の死とともに自分も死んだ。けれど生き続けている。妻のいない人生を生きなければいけなくなった。」

配偶者を亡くすということは、この言葉に尽きると思います。

AKIRAさんの文面は、今後多くの方に励ましを与えることと思います。ありがとうございました。

カウンセラー 日高りえ

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